スペースシンタックス理論で得られた統合値(Integration Value)を参考に、
質素な歩行者シミュレーションを行ってみました。
simulation-space syntax-multi agent system
↑シミュレーション動画↑
*1を参考に、以下のルールでそれぞれ作成しました。
1.コンベックススペース
a) 各頂点が全て凸状になるよう、外部空間を分割する
b) その分割数が最小、かつ個々の面積が最大になるようにする
2.アクシャルラインの作成ルール
a) すべてのコンベックススペースに一本以上のアクシャルラインが貫通し、
b) 作成されるアクシャルラインの本数が最小となり
c) 全てのアクシャルラインが少なくとも一箇所で、他のアクシャルラインと交差する。
今回作成した歩行者のシミュレーションは、
直線を分散・経路追従のみの行動パターンで移動してるだけで便利な物ではありませんが、
インテグレーション値と歩行者分布量に相関関係があることから、
スペースシンタックス論を応用して、おおよそ正確な歩行者シミュレーションが行えるのではないかと思っています。
*1では、歩行者量に影響を与える因子として、インテグレーション値に加え用途集積度、
駅からの距離を取り上げており、歩行者量のを予測するモデル式まで算出しています。
下記のファイルからシミュレーションを実行できますが、以下のプラグインが必要です。
Syntactic: http://www.grasshopper3d.com/group/space-syntax
Kangaroo: http://www.food4rhino.com/project/kangaroo?ufh
Large-Objects-Millimeters
path-following_on-nurbs_ddl
*1:http://ci.nii.ac.jp/naid/110004849573
荒谷亮、竹下輝和、池添昌幸「スペースシンタックス理論に基づく市街地オープンスペースの特性評価」
投稿拝見させて頂きました。
ありがとうございます。
私たちも今SULで研究をしておりますが、インテグレーション値だけでは正確な歩行者量として利用するには難しいかと考えています。
より精度の高いシミュレーションを行うには必要なパラメーターがあるかと思います。
例えば、検証する地理情報(ビジネス街なのか、住宅街なのかetc)、時間軸を尺度とした交通量、より正確な情報として人がそのルートを「選択」するうえでの諸要因(コンビニ/銀行がある、日影が多いから、道幅が広いからetc)をパラメーターとして与える。
一番パラメーターとして数値化するのが難しいと思っているのが上記に挙げた人の「振舞」かと考えております。
そういった意味で「実測」も重要になるかと思います。
「実測」から得られる値も分析しシミュレーションに取り込めればと思っております。
実測とシミュレーションの比較は実プロジェクトでは重要です。
実際にある敷地で試行してみると新たな課題が見えてくるのではないでしょうか?
コメント頂きましてありがとうございます。
確かに、インテグレーション値のみで歩行者量を予測するのは難しいかもしれません。
現在、私の所属する大学のキャンパスでスペースシンタックス理論を適用して空間分析を行ってみたところ、予測していた結果と違ったものになりました。
インテグレーション値が低いと思っていたところが高くなったりと、歩行者量に関してはその他の要因も考慮しないといけないと思いました。例えば、大学のキャンパスの場合、食堂・駐車場などの用途によっては、歩行者との因果関係がインテグレーション値よりも局所的に高くなるのではないかと思っています。
これらの要因を探索するために、ご指摘頂いた通り、実測しなければならないと感じました。
また、頂いたコメントとは関係ありませんが、スペースシンタックス理論で得られるインテグレーション値は、空間の持つ中心性・アクティビティのポテンシャルを表していると、私は解釈しています。
既往の研究を拝見すると、インテグレーション値が高くても、中心性を阻害する要因(空間の繋がりを分断する大きな道路など)があれば、アクティビティ(歩行者量)が高くならないことを示しています。こういった意味で、空間の繋がりの「強さ」でなく「ポテンシャル」を示していると思っています。
このインテグレーション値を利用した設計プロセスとして、空間のもつポテンシャルを阻害しないようなプランニング、もしくはこれを促すようにプランニングする、といった手法が無難なのでないかと思っています。
そこでお聞きしたいのが、SULではインテグレーション値をどのように解釈しているのでしょうか。 また、これをどういった手法で設計プロセスに活かせると考えてますでしょうか? 前回の投稿では、ISOVISTを利用したプランニング・サイン計画を検討しておられましたが、インテグレーション値を利用したスペースシンタックスについて、ご意見頂きたいです。
ご返信が遅くなりまして申し訳ございません。
Integration Valueに関してはBill Hillierが考案した計算式を用いております。
チームでもある特定の地域でIntegration Valueを算出した結果、実際(目視での観測)とは少し違うのではという結果と認識しております。
恐らく、Space Syntax理論でのIntegration Valueは人の「移動」に対して重荷を置いているからではないかと。
現状のIntegration Valueはあくまで結果を評価する上での指標として捉えております。(ツール上の結果+実測で最後は人が評価する)
もっと複数のエリアを検証して結果を比べていく必要があるかもしれません。
具体的には以下の検証が出来ないか考えております。
・敷地のランドスケープデザイン、動線計画
・最寄り駅から検証敷地(建物)への最短ルートと歩行者量Integration Valueの相関関係
・検証エリアの3D ISOVIST分析とIntegration Valueの相関関係
・検証エリア空間をデジタル内に可視化することで対象エリアの空間を評価できないか?
言葉でカテゴライズすると都市計画(都市空間構造の解析)に近いかもしれません。
上記結果をチーム内で評価することで、「人」にとってアプローチのしやすい建物か、認識し易い建物か、魅力的な立地であるか、景観に合った建物かなど計画案の評価ができればと考えております。
まだまだ「Space Syntax」は馴染みの薄い言葉ですが、従来の設計手法に「Space Syntax」の考え方を取り入れ、設計/施工者にとって価値の高い情報を提供し、「人」にとってより良い街づくりに役立当てたいと考えております。
引き続きSUL Space Syntaxチームは研究を進めていき近況を「OPEN DDL」にアップしていきたいと思っておりますので
今後ともご拝読どうぞよろしくお願いいたします。
返信頂きありがとうございます。
また、検証項目も挙げて頂きありがとうございました。
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